カヌーのパリ五輪代表・羽根田卓也選手が1月27日放送の『若狭敬一のスポ音』(CBCラジオ)に出演しました。 若狭敬一アナウンサーを相手に、競技と向き合う中で導き出した持論を語る羽根田選手です。

     

今年のパリ五輪代表

カヌー競技のメダリストである羽根田卓也選手は、愛知県豊田市出身の36歳。今年開催のパリ五輪を含む5大会連続でオリンピックに出場。カヌースラロームの日本代表です。

カヌースラロームは、変化に富んだ流れの中で行われます。コースの中に吊るされたゲートを一艇ずつスタートしていきます。
ゲートを通過する技術と所要時間の両方を競う競技で、ゲートに接触したり、通過せず抜かしてしまうと減点になります。

2016年リオデジャネイロ五輪ではカヌー競技で日本人、そしてアジア人初の銅メダルに輝きました。

選手の役目

羽根田「いい準備をしてくれば、いい順位の確率は上がります」

ただ、それは時の運。ひっくり返ってしまうこともあるそうです。
だからと言って、「努力しなくてもいい」ではなく、確率を上げる努力をすることが選手としての役目だと言います。


羽根田「努力は100%するんだけども、いざ大会当日になったら、どんな結果も受け入れる心の準備はしておかなければいけないんです」

カヌーとどこが違う?

ボクシングは3分間12ラウンドの36分。競技時間が長い種目は忍耐力と、気持ちの波を作る必要があるのかもしれないと想像する羽根田さん。自身のカヌー競技についてはこう語ります。

羽根田「我々の競技は100秒間に全集中しなければいけないので、没頭する力が必要だと思っています」

いろんな種目がありますが、競技時間が短ければ短いほど緊張が大きくなり、取り返しがつかなくなると持論を展開する羽根田さん。

ボクシングの3分12ラウンドだとどこかで巻き返せる可能性があります。テニスでも野球でも、序盤でやられたら終盤で取り返すとか、序盤から逃げ切るなど、競技時間が長いと作戦も立てられます。

羽根田「それが9秒の100メートル走だと、1回失敗すると絶対に勝てないので、瞬間にかける没頭力、集中力みたいなものは違うのかもしれないですね」

この瞬間に生きる

カヌー競技に100秒間は、選手からするとあっという間。いつの間にかゴールしていたという感覚だそうです。

羽根田「没頭力、集中力。その瞬間瞬間で僕は生きるようにしてるんですよ。大会の時も瞬間瞬間。過去、未来のことはあまり考えない。瞬間瞬間の切り取りの連続で100秒間です」

クリアしなければいけないゲートにいかに集中し、数秒前にした失敗を振り返らず、数秒後に起こるかもしれないアクシデントを不安がらないことが大切だとか。

羽根田「無心になる、無になる。たぶんこれをゾーンって言うと思うんです。ゾーンの瞬間を100秒間の中に、どれだけ作り出せるか。目標は1秒間のゾーンが100回ですが、なかなか難しいです」

人生にも通じる

羽根田「ゾーン、この無の瞬間、没頭の瞬間は、競技だけじゃなくて人生においても凄く大切にしてますね」

まるで禅僧のような羽根田さんです。

最後にパリオリンピックに向けての抱負を聞きました。

羽根田「オリンピック5回目という経験を生かして、できるだけ高いところを目指して、皆さんの期待に応えられるよう頑張りたいと思います」

羽根田選手の人生にも通じる競技観。カヌー競技の見方が変わりそうです。 
(尾関)